相続放棄したものが覆ること
相続放棄が「受理」されるとはどういうことか?
相続放棄の申述受理には「既判力」がなく、
相続放棄が受理されたあとも
相続人の債権者が、相続放棄の有効性を争って訴訟をすることができ、
その訴訟で、すでに受理された相続放棄の効力が失われてしまうことがあるということです。
ふつう
日本の裁判は、3回勝負できるということを、学校の授業でも習ったと思います。
地方裁判所で負けても、高等裁判所に控訴できるし、さらに最高裁判所に上告できることもあります。
地裁で終わっても、高裁で終わっても、最高裁まで行っても、
最後に出た判決が確定すれば、その判決には既判力が生じ、その判決に当事者は縛られることになります。
また同じ案件をもう一回裁判所に訴えるワンチャンとか、泣きのもう一回勝負はもうないのです。
ところが、
相続放棄の受理については、この既判力というものがないので、
後日、債権者とかが、相続放棄は無効だ!借金を払ってくれ!と訴えることができます。
そして、その裁判で相続放棄が無効になってしまうこともあるということになります。
そういうこともあってか、
家庭裁判所は、
「相続の対象となるべき財産が皆無であると考え、その考えたことが客観的にみて相当であるような場合」というような特段の事情がある場合、
そして、相続放棄の受理の実質的な要件を欠いていることが明らかでない限りは、
3か月の熟慮期間が経過したとはみなさず、原則として相続放棄の申述を受理する傾向にあるようです。
被相続人の債権者からの、借金の支払いなどの請求に対して、
そのまま放置すれば、これは相続することを承認し払う義務を負うことになります。
明らかに、相続財産を承継したという事実がないのであれば、熟慮期間の3か月を経過していたとしても、
あきらめずに、相続放棄の申述をしたほうがよいと思います。
ただし、それが確定的に相続の責任を逃れられるということではありませんということを再度念のため書いておきます。