突然、高額の請求書がきた・・・

半年前に亡くなった父が他人の保証人になっていたみたいで、何百万もの請求書が送られてきたのですが、払わないといけないのでしょうか?
このようなご相談を受けることがあります。

亡くなられたお父さん(被相続人)の借金(債務)はお父さんの相続人に引き継がれますので、支払う義務があります。しかし、相続放棄を家庭裁判所へ申立て受理されれば、債務を支払う義務はなくなります。

相続放棄をするには

  • 自分のために相続が発生したことを知った時から3カ月以内に
  • 家庭裁判所へ申述(申立)しなければなりません。

では上記のお話のように亡くなってから3カ月以上過ぎた場合は、もう相続放棄できないのか?そんなことはありません。

3カ月以内というのは、被相続人が亡くなったことを知り、かつ、その人から引き継ぐ(相続する)財産があることを知った時からのことです。この場合の財産とはプラスの財産(不動産、預貯金など)だけでなくマイナスの財産(借金、債務)もです。

ですから、お父さんが亡くなったことは最期を看取ったから知っていたけれど、借金があることは、その時には全く知らないで、半年後に請求書で初めて知ったという場合には、請求書が来たときから3カ月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申立をすればよいということになります。

ただし、お父さんの預貯金を相続人が既に消費してしまったり、不動産の相続登記や遺産分割協議した場合には、相続することを承認したとみなされ相続放棄は原則として認められません。しかし、してしまったからといってあきらめずに、とりあえず相続放棄の申立をし、裁判所の判断に委ねるほうがよいでしょう。

相続放棄をすると

  • 債務を支払う義務はなくなります。と同時にプラスの財産を相続することもできません。相続放棄をした後に、被相続人の財産を消費したり、あるいは隠したりした場合は、相続することを承認したとみなされる場合がありますのでご注意ください。
  • 相続する権利は次順位の相続人へ移ります。可能ならば、相続放棄をしたことを次順位の相続人へ伝えてあげるのが親切でしょう。
  • 民法940条に「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」と規定されています。財産の所有者ではなくなったとしても管理義務が残りますので、他の相続人に早めに引き継ぐことをお勧めいたします。
  • 次順位の相続人もまた、相続放棄するのであれば、先順位の相続人が相続放棄をしたことを知った時から3カ月以内にする必要があります。

相続放棄できる人は?

相続放棄の申立は、被相続人が生きているうちにすることはできません。そして相続放棄ができるのは、その時点で相続する権利がある人だけです。

第一順位の相続人
まず、相続人となるのは、被相続人の配偶者と子です。子の全員が相続放棄した場合には、相続する権利は第二順位の相続人へ移ります。
第二順位の相続人
被相続人の両親、あるいは両親が既に亡くなっている場合は祖父母です。両親、祖父母、曾祖父母・・・と遡って全員が既に亡くなっているときは、相続権は第三順位に移ります。
第三順位の相続人
被相続人の兄弟です。兄弟のうち、既に亡くなっている人がある場合は、その子が相続人となります。

以上のように、一旦、相続放棄をすると、次順位へ相続権は移っていき、その人たちも相続するのか放棄するのか決めなければいけませんのでご注意ください。

相続放棄するべきか迷っている場合には

  • 相続財産の調査に時間がかかって、3カ月以内には放棄するかどうか決められそうにない場合は、考慮期間の伸長を家庭裁判所へ申し立てることができます。
  • プラスの財産が多いのかマイナスの財産が多いのか、分からない場合は、「限定承認」という手続もあります。これは、もしマイナスの財産があった場合は、プラスの財産の範囲内で、相続するという方法です。但し、これは相続人全員が共同して家庭裁判所へ申し立てなければなりません。

相続財産の消費に当たるのか?

生命保険金
よく質問を受ける事柄として、生命保険金があります。被相続人が契約していた生命保険金は受け取ってよいのか?ということですが、これはその契約内容によります。一般的に、死亡保険金は相続人が受取人に指定されていることが多いですが、この場合には、相続人が受け取るのですから相続財産ではないといえるでしょう。しかし、リビングニーズなどで被相続人が受取人となっている場合などは相続財産となるでしょう。生命保険金については契約内容などを保険会社とよく確認する必要があります。
葬儀費用
葬儀費用を被相続人の財産から支払いましたという場合、相続財産を消費したことになり、相続放棄ができなくなるのかという問題点があります。これについては、最高裁などで判断されたことは未だ無く、断定的なことは言えませんが、葬儀をすることは日本社会において、当然のことであり、葬儀をしたからといって相続放棄が認められないということは無さそうです。
被相続人の入院費の支払い
多くの場合、最後は病院で亡くなられるでしょう。当然にして、病院へ支払う債務が発生しています。この支払の可否についても、裁判所の判断が確定しているわけではありませんので、断定的なことは言えませんが、この支払いをしたからといって、相続放棄が認められないということは無いようです。

しかし、無用の混乱を招くのを避けるため、葬儀費用や入院費の支払いは、被相続人の預貯金などを解約して支払うのは避けたほうがよいでしょう。

相続放棄の費用(大阪家庭裁判所へ申し立てる場合)(消費税込み)

司法書士報酬
33,000円(但し、同時に申し立てる場合に限り、相続人二人目からは一人につき27,500円)
亡くなられてから3か月以上が経過している場合は、別途上申書などが必要となり、その他書類作成費として11,000円以上の追加報酬が掛かることがあります。
戸籍謄本など必要書類の取得を依頼される場合
1通につき1,100円
実費
収入印紙800円、予納郵券(切手代)450円、戸籍謄本等実費、交通費、郵送費
(収入印紙、予納郵券など裁判所へ支払う費用は予告なく変更されることがあります。)