死後3か月以上経過した場合の相続放棄
100年前に亡くなられた方について、相続放棄が認められるのか?
今回は、相続放棄の申し立てを家庭裁判所が受理しました。
認められるのか?と書いてしまったのですが、
正しくは、受理されたということです。
相続放棄の申し立ては、亡くなられた方(被相続人といいます。)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にするのですが、
一定の要件のもと、受理されます。
受理されると、その相続人は、最初(被相続人が死亡した時)から被相続人の相続人ではなかったことになります。
相続放棄が受理されるためには、
相続することを承認していないこと、
熟慮期間が経過していないこと、
が要件になります。
相続を承認するとは、
具体的には、
遺産をもらったり、被相続人の債務を引き継いで弁済したり、借りている住宅を引き継いだりということになります。
遺産をもらう権利を受け取る、被相続人がすべき義務を引き継ぐ、契約を引き継ぐというようなことです。(民法921条)
こういうことをしたあとで、やっぱり相続放棄をしたいです、ということはダメということになります。
熟慮期間というのは、
簡単に言ってしまうと
被相続人が亡くなったことを知り、かつ、自分が相続する財産、権利、義務があると知った時から3か月間、ということになります。(民法915条~917条)
今回の事例で行くと、
そもそも100年前に死亡した不動産の登記名義人のことを、知らなった。⇒そういう人がいた、ということは、役所からのお手紙によって初めて知った。
当然、いつ死亡したかも知らなかった。⇒その人の相続人にあたることと死亡日は、司法書士が戸籍を調べてから確実に判明した。
そして、その調査により、自分が直接の相続人ではなくて、自分のご先祖(直系尊属)が相続人にあたることが分かった。
その人たちは、
相続することを承認したのか?
相続を放棄したのか?
民法916条により
そのご先祖が、相続する、しないを判断しないで死亡した時は、その相続人が相続放棄する、しないを判断することができることになります。
そして、この916条は、中間の相続人さんが自分が相続人であることを知っていたか否かにかかわらず、適用される(令和1年8月9日最高裁)ので、
今回は、依頼者さん自身が、自分が相続する立場にあるということを知った時から3か月以内であれば熟慮期間も経過していないということです。
役所から通知が来て、相続人関係を調べて判明した時から3か月を経過しないうちに、家庭裁判所に相続放棄の申し立てをし、受理されたということになります。
何度も書いている
「受理された」という言葉、
なんか、一抹の不安がある言葉ですよね。。。
相続放棄したいという意思表示を受け取ったということで、
絶対的に相続放棄を裁判所が認定した、ということではないんです。
その辺のことは、次回、書きたいと思います。
参考法令
民法第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
第916条 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
第917条 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。