成年後見制度の問題点

今朝の産経新聞に次のような書き出しで始まる記事が掲載されていました。

「東日本大震災で、被災地の弱者保護が大きな課題となっている。判断能力が不十分な認知症の人や障害者などを法律や生活面で見守る「成年後見制度」では、世話をしていた後見人も被災するなどして、制度が利用できなくなった被後見人が多数いるとみられる。専門家は「現状把握を急ぐなど、公的な支援が必要」と指摘する。」

以上、産経新聞平成23年4月13日朝刊より引用

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東日本大震災では、成年被後見人と言われる財産管理を親族あるいは第三者にしてもらっている方も多数被災されていることでしょう。

被災を免れた被後見人であっても、後見人が被災していれば、財産の管理が滞ってしまいます。

早急に、後任となる新たな後見人を選任しなければ、被後見人の生活は成りゆかないことになってしまいます。

しかし、後見人の解任選任は、誰かが裁判所に申立しないと、裁判所としては動けないとの見解を示しているようです。

 

成年後見制度がスタートして、約10年が過ぎましたが、今回のようなケースは特殊としても、様々な問題点が山積みです。

 

私自身も、実際に2人の方の後見人をしています。

いろんな壁があって、思うように動けないことを実感することがあります。

 

ほんの一例ですが、たとえば、

被後見人が施設に入所していて、寝たきりであっても、

郵便物を後見人の住所へ転送してもらうこともできません。

(郵便局の方がよく分からないまま転送してくれることもあるようですが・・・)

郵便物を転送してもらえなければ、郵便受けはすぐに一杯になってしまいますし、

しなければいけない手続も看過してしまうことにもなります。

 

また、医療行為の同意を病院から求められることもあります。

後見人はあくまでも財産管理をするのが役目ですので、

手術の同意などは権限がありません。

病院としては、誰かに同意を貰いたい。

後見人なら顔を合わすし、話をもっていこうということかもしれません。

でも、我々にはどうすることもできません。

 

後見人の報酬の問題もあります。

多くの場合は、親族が後見人になります。この場合、後見人に報酬を支払うことはあまりありません。

しかし、事情があって、司法書士や弁護士が後見人になる場合は、職業として引き受けていますから、

対価が発生するのが普通です。

この場合の報酬額は、被後見人の財産や後見人の仕事内容に応じて、家庭裁判所が決定します。

そして、決定された額を被後見人の財産の中から支払います。

ということは、財産が無ければ、報酬はゼロということになります。

このようなケースは、実際にありますし、これからも増えていくのではないかと思われます。

 

様々な問題点が解決されていない現状においては、親族以外の後見人の成り手が不足しています。

今後、成年後見人の需要が高まっていくのは間違いありません。

国として、自治体として、国民として、

成年後見制度にはもっと関心をもって、問題解決に取り組んでいかないといけません。

 

国民全員が、成年後見制度に関わる可能性があるわけですから。

それもかなり高い確率で。

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