自己破産とは

どうがんばっても、借金の完済はできないという状況に陥った場合に、債務者の財産をもって債権者に公平に清算し(但し、生活に必要なある程度の財産(自由財産)は手元に残すことができます)、裁判所の免責許可決定により、それ以上の返済義務を免除し、債務者の生活を再生する機会を確保する制度です。
個人の方で財産が無い場合は、換価・配当はされず、破産手続き開始と同時に破産手続き廃止となり、免責許可決定を待つことになります(大半はこの同時廃止のケースとなります)。

収入に比べて、住宅ローンの支払負担が大きい場合は、住宅を売却したほうが将来の生活再建がし易いでしょう。二次破綻をさけるために、個人民事再生よりも自己破産を選択することも考慮すべきでしょう。その場合は自己破産手続きと共に、住宅の任意売却手続きを進めて行くことになります。

非免責債権

次の債務については免責されません。

  1. 租税債務
  2. 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償債務
  3. 破産者が故意又は重過失により他人の生命又は身体を害した不法行為に基づく損害賠償債務
  4. 夫婦間協力及び扶助の義務に係る債務
  5. 婚姻費用の分担の債務
  6. 子の監護に関する義務による債務
  7. 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求及び使用人の預かり金の返還請求による債務(給料等)
  8. 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債務
  9. 罰金等の債務

免責不許可事由

以下の事由に該当する場合、免責不許可となる可能性があります。

  1. 財産を隠したり、破壊した場合
  2. 転売目的でクレジットカードを使った場合
  3. 支払不能状態であるのに、特定の債権者に優先して弁済した場合
  4. 浪費、ギャンブルなどで債務を負った場合
  5. 破産開始の恐れがあるのに、嘘をついて借り入れた場合
  6. 裁判所へ虚偽の報告、書類提出した場合
  7. 破産管財人等の職務を妨害した場合
  8. 7年以内に破産による免責、給与所得者再生計画認可決定、ハードシップ免責を受けた場合

自己破産のメリットとデメリット

自己破産のメリット

  1. 免責許可決定により借金の支払い義務がなくなります。
  2. 早期に生活再建がしやすくなります。

自己破産のデメリット

  1. いわゆるブラックリストにリストアップされます。これにより約5~10年の間、借り入れができません。
  2. 官報に氏名住所等が掲載されます(しかし、一般人で購読している人は少ないでしょう)。
  3. 資格制限により、警備員、生命保険募集人、宅建業等一定の職業には就けません。
    但し、免責が確定すれば、資格制限はなくなります。
  4. 保証人がいれば、保証人が借金を返済していくことになります。
  5. 浪費やギャンブルを原因とする借金の場合、免責不許可となることがあります。

自己破産のよくあるご質問

戸籍などに破産したことが載るのでしょうか?
戸籍や住民票には載りません。市町村の破産者名簿には登録されますが、免責決定により抹消されます。
選挙権がなくなるのでしょうか?
なくなりません。国民の重要な権利です。きっちり投票に行ってください。
破産したら、会社をやめなければならないのでしょうか?
破産を理由に解雇することは違法です。但し、資格制限のある職業の場合、職を失うことになるかもしれません。取締役の場合は会社との委任契約が終了することになるので、一旦、退任しなければなりません。再度選任することは問題ありません。
裁判所から会社に通知されることはありません。ただし、勤務先に借金がある場合、勤務先も債権者ですので、破産申立てにより知られることになります。
家族、知人、会社等に知られずに債務整理手続きをすることができますか?
司法書士や裁判所が手続きについて債権者及び本人以外に伝えることはありません(上記参照)。
大阪地裁での手続きの場合で、司法書士が関与している場合は郵便物を司法書士宛に送ってもらえますが、それ以外の裁判所では郵便物を本人宛に送ることがありますので、家族に知れることはありえます。
しかしながら、経済的再生には生活の見直しが不可欠であり、家族の協力なしには困難ですので、本人から伝えて、協力を求めることをお勧めします。また、官報に氏名住所等が掲載されますが、一般の人が購読していることは稀ですので、知人に知られる可能性は低いでしょう。

自己破産の費用(消費税込み)

    1. 債務金額が1,000万円以下の場合
      債権者数10以下の場合、基本報酬として220,000円
      債権者数11以上20以下の場合、基本報酬として275,000円
    2. 住宅ローンを除いた債務金額が1,000万円を超える場合
      基本報酬として440,000円
  1. 管財事件となった場合又は不動産の任意売却を伴う場合、報酬として別途55,000円請求することができる。
  2. 過払金の返還を受けたときは、返還過払金の20%相当額を成功報酬とする。
  3. 裁判所への実費支払分別途必要となります。
    1. 大阪地裁での破産(同時廃止)の場合
      収入印紙1,500円、予納金10,584円(裁判所により予告無く変更されることがあります)
    2. 管財事件となった場合、破産管財人費用など
      数10万円以上必要となる場合あります。
  4. 交通費、郵送費別途必要となります。

借金問題の解決方法の比較

概要
任意整理 特定調停 個人民事再生 自己破産
債権者と弁済方法(将来利息・損害金のカット、弁済期間等について)を裁判外で和解交渉します。 債務者と債権者との間に裁判所の調停委員が入り、残債務の弁済方法等につき和解を図ります。 債務を原則5分の1(但し、最低額100万円)に減額し、 原則3年間で分割弁済する手続きです。住宅ローンはそのままで、その他の債務を減額する手続きも可能。 債務者の財産をもって債権者に公平に清算し、裁判所の免責許可決定により、それ以上の返済義務を免除します。
今後の支払
任意整理 特定調停 個人民事再生 自己破産
和解交渉した額を原則3年から5年での分割弁済します。 和解交渉した額を原則3年から5年での分割弁済します。 5分の1又は100万円に減額した額を、 原則3年間で分割弁済します。住宅ローン特則の場合、住宅ローンはそのまま払い続けます。 免責決定後の支払義務はありません。
メリット
任意整理 特定調停 個人民事再生 自己破産
依頼した時点で業者の督促、請求が停止します。
損害金のカットも交渉可能。
過払金が発生していれば、元本が減少します。
過払金により元本を完済している場合、残った過払金の返還を求めることができます。
依頼した時点で業者の督促、請求が停止します。
債務者自身で手続可能。
手続費用が安い。
浪費やギャンブルなどを原因とする借金でも手続きが可能です。
依頼した時点で業者の督促、請求が停止します。
一定の場合を除き、住宅を処分せず借金を整理することができます。
浪費やギャンブルなどを原因とする借金でも手続きが可能です。
依頼した時点で業者の督促、請求が停止します。
免責決定されれば、債務は全てなくなります。
デメリット
任意整理 特定調停 個人民事再生 自己破産
約5年は融資利用やクレジットカードを利用できなくなることがあります。 和解後、支払が滞ると、直ちに強制執行(給料の差押など)を受けることがあります。
約5年は融資利用やクレジットカードを利用できなくなることがあります。
調停が成立するまでの損害金が加算される可能性があります。
過払金の返還を和解の内容とすることは困難(別途訴訟が必要)です。
他の手続きに比べ時間と費用がかかります。
約5~10年は融資利用やクレジットカードを利用できなくなることがあります。
浪費やキャンブル等による債務の場合免責決定されないこともあります。
資格制限により一定の職業には就くことができません。
但し、免責決定により資格制限はなくなります。
住宅などの財産は換価処分されます。
約5~10年は融資利用やクレジットカードを利用できなくなることがあります。
要する期間
任意整理 特定調停 個人民事再生 自己破産
2~4ヶ月(但し、裁判になればさらに長期化の可能性あり) 調停申立てから調停が成立するまでに3ヶ月程度 相談を受けてから、支払スタートまで6ヶ月から10ヶ月程度 破産申立てから6ヶ月程度