相続問題:成年後見

成年後見制度とは

成年後見制度とは、精神上の障害により判断能力が不十分になった方の財産を、
後見人が判断能力を補い、財産を管理し、守るための制度です。
成年後見制度には大きく分けて「任意後見制度」と「法定後見制度」があります。

「おじいちゃん、おばあちゃんが高額商品を契約してしまった・・・」

私たちの日常生活は多くの契約が存在します。
家を買ったり、生命保険に加入するだけでなく、食べ物を買ったり、散髪をするのも契約の一種です。

そのような契約の多くは、対価が発生し、契約した以上は、
約束通り事物をを引渡したり、お金を支払う義務が生じます。

日本は医療技術が進歩し高齢化社会が進む一方、過度なストレス社会でもあります。
このような社会に暮らすうちに、判断能力に衰えが見え、
認知症や精神疾患を患う方が増加しています。
しかし、判断能力に衰えがあったとしても、一旦結んだ契約は守らなければなりません。

知的障害を持つ我が子が、高額な自動車を買ってしまった・・・
お爺ちゃんの入院費を工面するため、お爺ちゃん名義の自宅を売りたいと思っても、
認知症を患っているお爺ちゃんは売買契約できない・・・
このようなときに役立つのが成年後見制度です。

成年後見制度にはタイプがある

今は元気で、自分で何でも判断できるけど、将来認知症になったときが心配・・・

このように将来に備えておくのが、「任意後見制度」です。
将来の財産管理を任せる後見人予定者と予め契約を結んでおき、
判断能力が衰えた時に、家庭裁判所へ申立て、後見を開始します。

最近、物忘れがひどくなった、もうほとんんど判断能力がない・・・

このように今すぐ後見を開始したいときに利用するのが「法定後見制度」です。
身内などから家庭裁判所へ申立て、後見人を選任してもらい、後見を開始します。
法定後見には本人の判断能力のレベルに応じて、「補助」、「保佐」、「成年後見」の3タイプがあります。

任意後見について

  1. 信頼できる方に将来の後見人をお願いし、公証役場で任意後見契約を結びます。
    この契約時に、将来の代理してもらう内容や後見人の報酬についても決めておきます。
  2. 判断能力が怪しくなってきたら、家庭裁判所へ任意後見開始を申立てます。
    申立は本人からできますが、配偶者や四親等内親族、任意後見受任者から申立てする場合は、
    本人の同意のもとで行います。
  3. 家庭裁判所が任意後見「監督人」を選任します。
    任意後見の場合は、任意後見人をチェックする任意後見監督人が必ず選任されます。
  4. 任意後見監督人が選任された時から任意後見が開始されます。
    公証役場での契約に従って、任意後見人が本人の財産を管理し、本人を代理します。
    但し、本人が行った行為に対する取り消しや同意をすることはできません。

任意後見制度には、任意後見契約以外にも、次のような契約もあります。

任意代理契約
判断能力は十分にあるが、体の自由が利かない、あるいは難しい法律判断ができない・・・
というときに、代理契約を結び、本人をサポートします。
見守り契約
代理契約まではしてもらわなくてもいいけど、見守っていてほしい・・・
というときに、契約の問題など財産管理等の相談相手になり本人を見守ります。
死後事務の委任契約
任意後見は本人が亡くなると同時に終了します。
入院費の清算や葬儀などの死後の事務については、別途の契約となります。
この問題を解決するため、任意後見契約の特約としておくのがよいでしょう。

法定後見について

  1. 身内の方の判断能力が怪しくなってきたら、後見人候補を決め、
    家庭裁判所へ申立てをします。申立は本人、配偶者、四親等内親族などからできます。
  2. 家庭裁判所は、本人の判断能力について鑑定などを行います。
  3. 審判にて「補助」「保佐」「成年後見」の後見類型を決め、後見人を選任し、
    後見が開始されます。必要に応じて後見監督人を選任する場合もあります。
  4. 後見の類型によって、後見人のできることが異なります。(下記の表参照)
  5. 法定後見人の報酬は、本人の財産に応じて、家庭裁判所が決定します。
類型 被補助人 被保佐人 成年被後見人
後見人名称 補助人 保佐人 成年後見人
判断能力
(具体的には、
日常生活に関する行為や、
重要な財産の
処分や管理をできるか?)
判断能力が不十分
(できるかもしれないが、不安がある)
判断能力が著しく不十分
(日常の買物はできるが、不動産の売買や賃貸、お金の貸し借りは自分一人ではできない)
判断能力を欠く
(自分一人ではできない)
後見人ができること 家庭裁判所が決めた特定の行為について同意すること、または代理すること 民法12条1項で定められた行為について同意すること、及び裁判所が代理権を与えたこと 法律行為すべてについて代理すること
本人が
単独でできること
家庭裁判所が決めた特定の行為については補助人の同意または代理を要する。但し、日用品の購入等日常生活に関する行為は単独でできる 民法12条1項で定められた行為については保佐人の同意を要する。但し、日用品の購入等日常生活に関する行為は単独でできる 日用品の購入等日常生活に関する行為は単独でできる

後見人には誰がなれるの?

後見人には誰でもなれますが、例外として次のような欠格事由がある方はなれません。

  1. 未成年者
  2. 家庭裁判所で免じられた法定代理人、保佐人、補助人、成年後見人
  3. 破産者
  4. 本人に対し訴訟をしている(した)者及びその配偶者や直系血族
  5. 行方不明者

誰が後見人になったらいいの?

本人のことをよく知り、本人の信頼も厚い身内の方が後見人になられるのがベストです。
但し、たとえば次のようなことがある場合は、職業後見人にお願いするのも一つの方法です。

  • 身内が後見人になることで、その兄弟、親子間で不信感が生まれそうなとき
  • 被後見人の財産を狙う身内がいるとき
  • 訴訟などになる可能性があるとき

職業後見人とは

後見人の仕事は、財産の管理や本人の代理であり、法律行為などの難しい判断を強いられる時があります。そこで、司法書士や弁護士が職業後見人となることがあります。
もしも、身内で後見人になれそうな方がいない場合は、司法書士などにご相談ください。
司法書士は社団法人成年後見センター・リーガルサポートという組織を作り、
成年後見制度を支えていています。

法定後見申立について

  1. 本人が居住する管轄の家庭裁判所へ申立てます。
  2. 申立には戸籍謄本や住民票、診断書など必要です。

法定後見人選任申立の費用:大阪家庭裁判所へ申し立てる場合(別途消費税が掛かります)

司法書士報酬
100,000円
裁判所費用
収入印紙800円(保佐人、補助人の場合は事案により異なります)
予納郵券
3,900円
後見登記費用
2,600円
鑑定費用予納金
100,000円(但し、家庭裁判所の判断により納付が不要な場合もあります)

裁判所に支払う費用は予告無く変更されることがあります。その他、交通費、郵送費、書類取得費など実費は別途請求させていただきます。