死後事務委任について
死後事務委任契約とは、死亡直後からの様々な手続きを、家族や親族、またはその他信頼できる第三者に任せる契約です。
死後事務は、遺されたご家族がするのが一般的かと思いますが、頼れる家族がいない、あるいは重荷をかけたくない、ご自身の強い希望がある場合などは、死後事務委任契約を検討されてはいかがでしょうか?
自分の亡くなった後、どのような葬儀や納骨をしてほしい、賃貸契約の解除をしてほしい、病院や老人ホームなどの支払いをしてほしい、クレジットカード等各種会員契約の解約をしてほしい、役所への届出など様々な希望を、生前のお元気なうちに任せる相手と契約をしてきめておくということになります。
ご自身やご家族のことで、遺す人も遺される人も疲れてヘトヘトにならないために
ライフステージの最終章、終活を支える方策の一つが死後事務委任契約です。
死後事務委任契約でできること
死後事務委任でできることは
具体的には、以下のような手続きなどです。
①葬儀や納骨のこと
②賃貸契約の解除、残置物の処分
③病院や老人ホーム、税金などの未払債務の支払い
④クレジットカードや各種会員契約、SNS、インターネットサービスの解除
⑤携帯電話、電気ガス水道などの解除
⑥ペットを引き取ってくれる人や施設へ引き渡す手続き
⑦介護保険、埋葬補助金など死亡による役所への届出
⑧関係者、寺院などへの連絡など
死後事務ですることは、公序良俗に反せず、また遺言書と抵触しない範囲において契約で自由に定めることができます。(民法521条等)
よって、上記以外のことも契約で定めることができます。
相続において、遺言書でできることは民法で定められていて、その範囲内は、相続人や遺言執行者が行うことになり、その範囲外において死後事務委任契約で定めたことを死後事務受任者が行うことになります。
死後事務委任契約で、できないこと
以下については、死後事務委任契約で依頼することはできません。
①相続の手続き
②遺言で定めるとされた事項や身分関係の手続き
③生前のこと
④死亡の届出
①相続の手続きは、法定相続人か遺言執行者しかできません。
預貯金を解約して相続人に引き渡すことや、不動産の相続登記などいわゆる相続の手続きは、法定相続人全員による遺産分割協議や有効な遺言書でもって、法定相続人や遺言執行者が手続きをすることができます。また相続した不動産の売却なども死後事務委任ではできません。
②民法など法律で、できる方法を限定的に定められていることも死後事務委任ではできません。たとえば、遺言執行者の指定や遺贈、子の認知、祭祀承継者の指定などは死後事務委任ではできません。これらのことは、死後事務委任契約とは別に遺言書の作成をしてその中で決めておくということになります。
③死後事務委任は、死後のことを任せるのですから、生前の財産の管理や手続きなどはできません。生前のことは任意後見制度や家族(民事)信託などを検討することになります。
④委任者が亡くなられた時に、最初にすることは、葬儀業者などの手配をしてご遺体の引取り安置からです。その後、葬儀の打ち合わせの中で、死亡届を葬儀業者が記載してくれますが、そこにサインできる人は戸籍法87条で限定されています。
死亡の届出をする義務があるのは
同居の親族・その他同居者・家主・地主・家屋や土地の管理人(病院長、施設長等含む)です。
義務はないが届出することができるのは
同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人及び任意後見受任者です。
この中に死後事務受任者は入っていません。
死亡の届出をできる人、してくれる人が見当たらない場合は、死後事務委任契約とは別に任意後見契約の締結も検討するべきでしょう。
どのような人が死後事務委任契約をするのか?
一般的には、死後事務委任契約などしなくても、相続人などご家族が、死後事務を行います。しかし、下記のようなご事情がある方は死後事務委任契約を結んでおかれると遺された人が楽になるかもしれません。
①戸籍上、相続人がいない場合
②相続人はいるが、疎遠になっている場合
③相続人はいるが、高齢や、障害があって、死後事務をするのが困難な場合
④家族たちにできるだけ負担をかけさせたくない場合
⑤内縁や同性のパートナーなど事実婚で、相続人ではない方に任せたい場合
⑥相続人に対して死後事務の強い希望を伝えておきたい場合
⑦賃貸契約を締結する際に死後事務を第三者や別居の家族に任せる場合
①相続人がいない場合
法定相続人がまったくいない場合、生前の入院の際の身元保証人を誰にしてもらうのかという問題から、死亡届に誰がサインするのか?葬儀納骨、さまざまな事務を誰がするのか?遺産を誰に承継してもらうのか?といろいろと考えておくべきことがあります。
まさに死後事務委任契約が必須で、生前の後見制度の利用の検討や遺言書作成及び遺言執行者の指定も必須といえるでしょう。
②相続人はいるが、連絡が取れない、あるいは関わりたくないという方
このような場合も①と同様だといえるでしょう。
③相続人が、判断能力が不十分になってしまった高齢の親というケース、あるいは障害などで判断能力が不十分なお子さんだけというケースも第三者に死後事務委任をしておかないと、親族であっても相続人でなければ手続きが進まないということが起こります。あるいは成年後見人を選任して死後事務をしてもらうことになるかもしれません。
④相続人となるご家族が国内の遠方にいる。あるいは海外にいるケース
葬儀などで一時的に帰省できたとしても、死後事務は何度も関係各所とのやり取りが必要です。オンラインや郵送でできる場合も増えてきましたが、なかなか進めにくいものです。このような場合も近くで動きやすい方に死後事務委任をしておくことを検討すべきでしょう。
⑤同居はしているが内縁や同性のパートナーなど事実婚関係の場合
現在の法律では、法定相続人ではないで、相続の手続きや死後事務ができないことがほとんどです。そのパートナーあるいは第三者との死後事務委任契約を結んでおかれた方が良いでしょう。遺言書作成及び遺言執行者の指定も同時に検討しておくべきでしょう。
⑥葬儀や納骨など強い希望がある場合
葬儀や納骨や法事など、遺されたご家族の意向で執り行っていくのが一般的かと思いますが、絶対にしてほしいこと、してほしくないことがあるのであれば、その希望を死後事務委任契約にして任せておくことを検討すべきでしょう。
⑦賃貸契約をする際の死後事務委任
最近は、高齢者が賃貸住宅を借りることが難しくなっています。一因として、高齢者の孤独死問題があります。孤独死の場合、相続人には損害賠償を求められるケースがあり相続放棄をして損害賠償のリスクを回避することがあります。相続放棄をした場合、相続人ではなくなるので賃貸の解約をすることはできません。そうすると貸主側としても次に貸すことや売ることができなくて困ります。そのような場合に備えて、賃貸契約を結ぶときに、解約する権限や残置物の処理をする権限を第三者に任せる死後事務委任契約をしておくことがあります。これは国土交通省や法務省も高齢者賃貸問題の解決の一方策として普及に努めています。住宅:残置物の処理等に関するモデル契約条項 – 国土交通省
誰に死後事務を任せるのか?
①家族、親族
相続人がいる場合は、あえて死後事務委任契約は必要ないかもしれませんが、上に列挙した⑥や⑦ような事情がある場合は家族を契約の相手として検討してみましょう。家族の場合、報酬が掛からないか安く引き受けてくれるということもメリットでしょう。
②友人や知人
法定相続人がいない場合は、信頼できる友人や知人がいるのであれば、委任するのもありかもしれません。ただし、死後事務は専門的な知識が必要な手続きもありますし、責任が重い仕事でもあります。そのような重責を担ってもらえるか?しっかりと話し合いされることをお勧めします。友人や知人が受任者になった場合、個々の手続きを専門家に復代理として依頼することも可能です。
③法定相続人ではないが、遺産を承継してもらう人
内縁関係や同性パートナーへの遺産承継を望むなら、遺言書作成と遺言執行者の指定とともに、死後事務をパートナーに任せるの良いかもしれません。受任者となったパートナーから個々の手続きを専門家に依頼されるのも可能です。
④司法書士など職業として死後事務を行う者
上記までの身近な人に任せるのは比較的費用が掛からないだろうと思われますが、死後事務をするには法的な知識も必要ですし時間と手間もかかります。また責任も重いです。よって、専門知識のある者へ委任されることで安心を得られ負担の軽減ができます。
ただし、費用は高額になります。どれだけの内容を委任されるか?仕事量やその難易度にもよります。また司法書士など第三者に委任する場合、法人であることが望ましいでしょう。死後事務委任契約をしたあと、受任する者が個人で先に死亡した場合は、委任契約は失効してしまいます。法人であれば、その法人が破産や解散をしなければ、代表者が死亡しても法人は継続されるので委任契約は失効しません。
※当事務所では当職が代表者である法人で死後事務を受任しますのでご安心ください。
⑤社会福祉協議会
地域によっては社会福祉協議会が死後事務のサービスをしています。受ける内容が限定的な場合もありますので、その地域ごとに確認して検討するべきでしょう。
①②③の場合で、個々の困難な手続きだけ、司法書士などに依頼することも可能です。そのような場合は個別にお問い合わせください。
死後事務委任契約を相続人が解除することができるか?
委任した人が死亡した後、受任者ではない相続人が、死後事務委任契約を破棄して、相続人として死後事務を進めていくことができるか?という問題があります。
民法653条1号では、委任契約は委任者又は受任者の死亡で終了する旨が規定されていますが、最高裁の判例で、「委任者の死亡によっても委任契約を終了させない旨の合意がされた場合には、民法653条1号の規定にかかわらず、委任者の死亡によっては委任契約は終了しない」とされています。
また東京高等裁判所の判例で「委任者の死亡後における事務処理を依頼する旨の委任契約においては、委任者は、自己の死亡後に契約に従って事務が履行されることを想定して契約を締結しているのであるから、その契約内容が不明確又は実現困難であったり、委任者の地位を承継した者にとって履行負担が加重であるなど契約を履行させることが不合理と認められる特段の事情がない限り、委任者の地位の承継者が委任契約を解除して終了させることを許さない合意をも包含する趣旨と解することが相当である」としています。
死後事務委任契約のなかには、委任者が死亡しても契約終了しない旨を入れておくのが当たり前なのですが、相続人でない第三者に委任する場合、相続人となる方とコミュニケーションが取れるのであれば、死後事務を第三者に委任するということを契約前にしっかりと説明をし理解してもらうことが重要だと考えます。そうでなければ、受任者と相続人との間で連携が取れず、死後事務の遂行が難航することになりますし、深刻なトラブルにもなりかねません。
遺言執行との比較
遺言執行者と死後事務委任の受任者は同一にしておくべきです。
遺言執行と死後事務の境界線はあいまいなところがあります。遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他の遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。(民法1012条)とされています。遺言執行者の仕事は、基本的には、プラスの財産を遺言で指定されたように分配し名義変更をすることです。しかし、遺言の内容によっては債務を弁済して残ったお金を分配するという場合があります。また価値の無いような残置物も厳密にいえば、相続人の財産です。これを死後事務で指定されているからといって、単純に廃棄してよいのか相続人に渡すべきなのか、判断が難しい場面があります。死後事務受任者と遺言執行者が別人で対立してしまっては、なかなか前に進みません。 よって同一人物が遺言執行と死後事務を担当するようにしておいたほうがよいでしょう。
後見制度、家族(民事)信託との比較
後見人は原則として本人の死亡と同時に権限が無くなるので死後事務はできません。
後見人は本人の存命中の財産管理や身上監護をする権利義務を有していますが、本人の死亡と同時に後見人ではなくなります。後見人であった者がやるべきことは預かっているものなどを相続人に引き渡すことと裁判所へ後見終了の報告をすることです。原則として債務の弁済はできません(一部例外あり)。また各種の会員などの解約もできません。
家族信託は、後見制度と異なり、本人の生前から死亡までのプラスの財産の管理をする仕組みです。信託契約の内容によっては、本人死亡後も継続して財産の管理ができます。ですから特定のものには死後事務が発生しないということもありますが、初めに列挙した葬儀や、役所の手続きなど信託には関係のない事務は発生しますし、信託契約の範囲外ということになります。
エンディングノートの作成
エンディングノートの作成は、死後事務を家族がする場合でも必須です。
死後事務を遂行する際には、葬儀や納骨などの細かい希望、連絡先、解約する相手先、そのIDやパスワードなど多くの情報が必要です。昨今は、サブスクリプション契約の解除など、スマホでの二段階認証を経ないとログインできないことも多々あります。
これらを公正証書でする死後事務委任契約に記載するのはあまりよいことではありません。重要な情報の秘匿性も損なわれますし、契約時の費用も上昇していまします。
よって、別途エンディングノートの作成は必須です。これがないと死後事務を進めることはかなり難航することになります。死後事務委任契約締結時にエンディングノートが完成していなくても構いませんが、必ず継続して情報を記していってください。
終活をサポートする各種の対策の比較
死後事務委任契約をするためには?
公正証書で契約をします。
死後事務委任契約を公正証書にしなければならないという法的制約はありません(任意後見契約は法律で公正証書による契約が必須とされています)。
しかし、本来ご家族がする解約などの処理、葬儀など宗教上も重要なことを第三者が任され、しかも委任した本人は亡くなられているので、公正証書という確固たる権限を証明する書面でなければ、手続きの相手方も応じていいのか?疑念が生じることになります。よって必ず公正証書で死後事務委任契約を締結すべきです。
預託金が必要
葬儀など委任する内容によっては、高額な費用が発生します。現預金など遺産を相続する立場の人が死後事務をするのであれば、その遺産から支払うことができるでしょうが、第三者など遺産を相続しない人が死後事務をするのであれば、その費用を契約時に預託しておくことが必要になります。葬儀の内容によっては、葬儀費用だけでも100万円以上になることもあります。また亡くなる前の入院が1ヶ月2か月と長期の場合は、高額医療で返ってくるとしても何十万という医療費の支払いが発生することもあります。よって預託する金額はそのようなことを予測して決めなければなりません。
預託する代わりに保険契約で支給する方法もありますが、第三者が死後事務をする場合には保険契約ができない場合もありますので注意が必要です。
死後事務委任契約などの費用について
契約書作成時には次のような費用が発生します。
①死後事務委任を司法書士など専門家に相談した場合の相談料、コンサルティング費用
②公正証書作成の公証人費用
③死後事務のための預託金
死亡後、委任事務の遂行後(または遂行中)には次のような費用が発生します。
④受任者の報酬
⑤死後事務遂行の実費が預託金を超える場合は通常は遺産から支払うことになります。
当事務所にご依頼いただいた場合のご費用、報酬等について(消費税込み)
①死後事務委任契約時
死後事務委任契約の相談料 1時間まで5,500円 以後1時間までことに5,500円
死後事務委任契約原案作成及び公正証書作成サポート 165,000円
上記のほか、登記簿謄本取得費など実費、公証役場への費用が別途かかります。
②当事務所が、死後事務委任の受任者になる場合の報酬について
死後事務の内容によって大きく変わりますので、ご相談のなかで、まずは目安をご提示させていただきます。
これまでの受任の実績(葬儀の手配から各種手続きの終わるまで、数か月かけて受任するケース)では、
80万円程度から100数十万円程度となっています。
各種クレジットの解約だけなど限定的な受任の場合は、このような高額にはなりません。
当事務所へのご相談は、まずはお電話、メール、LINEで
死後事務委任のご相談は年々増加しています。
当事務所のご相談の進め方ですが、
まずはお電話やメールで、簡単なご相談内容をお聞きします。
詳細については日時のご予約をいただいたうえで、ご来所または出張にて、直接お会いして、お聞きします。
委任される方、受任される方との面談が必要です。
お電話やメールでは、細かなニュアンスや背景、潜んでいる問題をつかみ取るのが難しく、しっかりとした委任契約の内容を作成できません。
死後事務委任や家族(民事)信託の契約は、自由度がかなり高いがゆえに、何度も希望をお聞きして内容の推敲を重ねないと、トラブルの種を抱えた契約になりかねません。
時間的、日程的な余裕をもって検討していくことをお勧めします。

