後見制度が変わります
国会で、成年後見制度の改正が可決されました(令和8年6月24日公布)
公布から2年半以内に施行されるので、令和10年の秋から年末ごろには新しい後見制度がスタートすると思われます。
この改正の特徴は大きく5点です
①補助人が選任され、必要性に応じて補助人に権限が与えられる。
②家庭裁判所が必要性が無いと判断すれば、後見制度の利用をやめられる。
③本人の利益のため特に必要であれば補助人の解任・交代ができる。
④補助人選任時に本人の意思を尊重し意向の把握を義務とする。
⑤任意後見の場合に、家庭裁判所の判断で任意後見監督人を選任しないケースがある。
改正についてまとめた図をご覧ください。
ものすごく簡単にいうと、補助人を選任し、同時に必要な権限を補助人に付与するということになります。
これまでは、本人の状況に応じて、後見、保佐、補助という類型に分かれていたのでまずそこが大きく変わります。
終われる後見制度になるのか?
この問いに関する私の回答は、「おそらく、そうはならない」です。
終われる可能性はこれまでよりも格段にアップしますが、そう簡単ではないのではないかと思います。
改正後の民法12条2項には「家庭裁判所は、必要がなくなったと認めるときは、・・・・審判の全部又は一部を取消すことができる」と規定されていますが、「必要がなくなったとき」とは裁判所はどう判断するのでしょうか?
現状の後見制度は、一度後見人が選任されると事実上、本人が亡くなるまで後見制度を利用しなければなりません。
(本人の判断能力が回復した場合はやめられますが、そのような事例は残念ながらほとんどないと思われます。)
具体的な事例で説明します。
たとえば、認知症などで判断能力を欠いてしまった父の所有する自宅不動産を売却して、その利益を父の介護などの費用にあてたい。
このような場合は、父に後見人を選任して、後見人が売買契約など売却の手続きをし、利益も後見人が管理することになります。
介護施設などの支払いは多くの場合、自動引き落としなので、その手続きや税務などの処理も終え、自宅売却に関する一連の活動が終わったとします。
現行の後見制度では、親族の考えていた目的を達した、後見制度を利用する必要性がなくなったとして、ここで後見制度の利用をやめたいと希望しても、やめられません。後見制度の利用をやめられる条件は、本人の判断能力が回復することだからです。
よって、自宅を売却した後も、後見人は父の財産を管理し、身上監護をし、裁判所へ定期的に報告をしなければなりません。
後見人が司法書士など専門職である場合は、本人の財産から報酬を定期的に支払うことになります。
このようなこともあり現在の後見制度の利用をしたくないという意見が多いのです。
この市民の声を踏まえて、今回の改正では終われる後見を検討したということになります。
では、後見制度の利用の必要性がなくなるとは?
自宅を売ったお金は本人の口座に入れて管理をしていくことになります。
この口座から介護施設や病院に支払をする、本人の生活費を引き出すのは後見人しかできません。
現状の後見制度では、後見人に就任したら、まず銀行など金融機関に後見人就任の届出手続きをします。
後見人として後見の登記簿や身分証明書などを提出して後見人の本人確認をし、本人の口座に後見人が選任されている登録をし、届出印やキャッシュカードも後見人として利用していくことになります。
改正後の後見でも、ここは同じように金融機関での手続きをすることになるでしょう。
改正後、
自宅を売却し父の介護などの費用を捻出できたから「後見の必要性がなくなった」として後見人がいなくなった場合、銀行はどう対応するのでしょうか?
本人は判断能力が回復していないと銀行で引き出せないし、家族も後見人ではないなら引き出せないでしょう。
後見人がいなくなった後、誰が管理していくことになるのでしょうか?
この点だけを考えても、「必要性がなくなった」と家庭裁判所が判断するのは難しいのではないでしょうか?
令和11年ごろから家庭裁判所が必要性がなくなったから後見の利用をやめたいという申立に対して、どのように判断するのか?
金融機関はどのように対応するのか?
改正後見がスタートするまでに、後見人がいなくなった後の本人の財産の管理する仕組みが構築されるのか?
注意しておく必要があります。
ほんとうに終われる後見が実現するといいなあと私は節に願います。
ただ、改正されても後見制度は本人の財産を、維持する、保守するということに力点がおかれるのは変わらないでしょう。
新しい後見制度になっても、やっぱり、判断能力がしっかりしている間に、将来の対策をしっかり講じておくことが大切だろうと思います。

