成年後見人の事件
今日のネットニュースで以下の記事が配信されていました。
「成年後見人の男 母親の貯金4400万円を横領 不動産業の男逮捕
母親の成年後見人の立場を悪用し、母親の預金を着服したとして、東京地検は12日、業務上横領の疑いで、東京都板橋区の不動産業、●●●●容疑者(64)を逮捕した。 地検の調べによると、母親(86)の成年後見人だった●●容疑者は平成18年11月から19年3月までの間、母親の口座から3回にわたり計4400万円を引き出し、自分の口座に振り込むなどして横領した疑いが持たれている。 成年後見人は認知症など判断能力が十分でない人の財産管理などを行う。●●容疑者は18年9月、東京家裁から母親の成年後見人に指定されていた。 家裁が23年4月、業務上横領罪で地検に告発していた。」
以上、MSN産経ニュースから(ただし、名前は伏せました)。
これまでにも、似たような事件はあります。
実刑になっているものもあります。
成年後見人とは、一言で言うと、
「被後見人の財産と権利を守る人」ということになるでしょうか。
基本的には
財産を出来るだけ減らさないようにする義務があります。
ですから、被後見人の利益のために使うのが後見人の務めで、
後見人の利益のために使うことはあってはならないのです。
たとえば、被後見人のためと称して、被後見人名義で新たに株式投資をしたり、
不動産投資をするなどの元本割れの可能性のある行為をすることも良しとされていません。
また、上の記事によるポイントがもう一つ。
業務上横領罪で逮捕されていることです。
「業務上」とは、反復継続して行う行為をいいます。
今回の場合は、日々後見人の事務を行う地位にある人が、その地位を利用して、
財産をとったので、業務上横領ということです。
「横領」だと懲役5年以下ですが、「業務上」がつくと10年以下になります。
そして、もうひとつ、記事には書かれていませんが、
この事件には「親族間の犯罪に関する特例」が適用されないだろうということです。
一定の身内(たとえば、配偶者や子供)が窃盗や横領をした場合、
その刑を免除すると刑法には定められているのですが、
後見人と被後見人の間の横領には、その定めが適用されないという最高裁の判決があります。
「未成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって,家庭裁判所から選任された未成年後見人が,業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に,上記のような趣旨で定められた刑法244条1項を準用して刑法上の処罰を免れるものと解する余地はないというべきである。」最高裁第一小法廷平成20年2月18日判決より。
つまり、親子間の問題と言って「ナアナア」では済まさないよということですね。
成年後見制度についてのご相談は年々増えています。
単に、後見人になれば、親のお金を口座から自由に出せるようになると
思っておられる方が少なくありません。
確かにある意味「自由に」出せるようにはなるのですが、
使い道は自由じゃありません。
あくまでも被後見人本人のために、必要があって使うのであって、
かつ、後見人としては被後見人本人の財産や権利を守るということが前提にあるのです。
このような事件の裏には、様々な事情があるのだとは思います。
たとえば、
認知症になった親あるいは突然の交通事故で意識がなくなってしまった
親の仕事を引き継いだけど、
どうしても、親個人の財産を使わないと仕事が回らない。とか。
親が子供のために残そうとしていた財産だったとか。
だから、それを使って何が悪いのだ!ということもあるかもしれません。
だけど、成年後見という制度はそれを許しません。
じゃあ、後見人制度を使わなければいいのか。
それでも、その財産の移動は無効になる可能性が高いです。
基本的には
判断能力が無くなってからは、財産を子供たちへ移すのは難しいということになります。
これからの時代、ますますこういう問題に直面することは増えると思われます。
その前に、準備をしておくことが必要だと言えます。
成年後見のご相談は<枚方市・寝屋川市・香里園の香里司法書士事務所/相続・遺言サポートオフィス> まで