持分放棄
もうすぐ、今年度も終わりですが、
この一年にあったこと、毎年のことですが、いろいろ勉強させられることがありました。
そのひとつが、「持分放棄」という原因でする不動産の所有権移転登記。
不動産の名義を変更するには原因が必要です。
たとえば、「売買」であったり、「贈与」あるいは「相続」。
他にも「遺贈」「交換」「財産分与」「時効取得」「譲渡担保」・・・いろいろあります。
この一年で、僕が初めて出くわした原因が「持分放棄」です。
持分放棄とは、ある不動産を二人以上の共有で所有しているときに、
そのうちの一人が、その持分所有権を放棄してしまうということです。
一人が放棄すると、自動的にその持分は他の共有者にその有する持分割合に応じて帰属します。
こんなの普通、使わない原因です。
なぜなら、贈与とか売買とかで名義を移すのが一般的だから。
じゃあ、なぜ今回は持分放棄だったのか?
その不動産が農地だったからです。
農地、つまり「田」や「畑」という地目の不動産を売買や贈与しようとするときには、
農地法で定められた許可書が必要になります。
農業委員会で出してもらうのですが、これがなかなか難しい。
名義を移すのに許可が必要な理由は、農地を維持するためです。
農業をできない人に名義を移して、簡単に農地を減らしてしまうと、
国の食糧政策に大きな影響をあたえるので、勝手には移せないのです。
ただし、相続するなどで自動的に所有権が移転する場合は許可不要です。
この度のケースは、まず兄弟で相続したのですが、
とてもじゃないけど、既に農地として使える土地ではなく、
売ろうにも売れない、あげようにも誰も貰ってもくれない。
結局、兄弟のうちの一人が、「やっぱりいらない!」となりました。
仕方ないので、他の兄弟が引き取ることに。
ところがです。
他の兄弟も農業などやったこともない人なので、売買や贈与で名義を移そうにも農地法の許可がおりない!
困った・・・どうしようかと思しました。
ん!?司法書士の受験時代に、許可のいらない所有権移転の原因を習った・・・
思い出した!!!持分放棄ってのがあった!!!
持分放棄は「もういらん!放棄する!」となれば、自動的に他の共有者に所有権が移るのです。
だから、許可を出す、出さないで農業委員会が口をはさむ余地がない。
許可がいらない→名義を移せる→ばんざーい!というわけです。
でも、とりあえず不安なので、法務局にも確認。
「持分放棄で移転登記の申請しますが、登記原因証明情報は・・・・で、免許税は・・・で、許可書もいらなくて・・・・」
と当たり前のことを打ち合わせしたのですが、法務局の担当者も、やったことがないらしく、
「そんなんありましたね。たぶんそれでOKと思います。」という適当な返事。
すったもんだの末、無事に持分放棄で名義を移すことができました。
しかし、相続したけど、自分で活用することも、手放すこともできず、
ただ税金を払わされ続けるなんて、こんな馬鹿な話はないと思います。
農地についての政策はもうちょっとしっかりやってもらいたいものです。
実際には草ボウボウどころか、木がボウボウの土地が農地扱いですから。
そして、立地としても、人因としても、農業をできない状況なら、それをほったらかしにしないで、
国として、活用する方策を打っていかないと食料自給率なんてあがりっこないでしょうに。